今年のお盆、8月13日は仏壇に参ったただけで、家から1時間ほどの場所にある、死んだ親父と父方の祖母がいっしょに眠るお墓には行かなかった。その代わりこの日は、以前から気になってた事を片付ける日に。
8月13日、まずは朝から片道1時間半をかけ、山奥で暮らす母の家へ。
倒れそうな古い備え付けの棚を壁から剥がし、新たな棚を設置した。とにかく物が多いが、母にとっては宝物だ。
それと、今年88歳の記念に描いた母の再婚相手の“ヨシお父さん(入院中)”の肖像画付き壁掛け時計を、修繕のため預かることに。
その足でさらに1時間半かけて嫁さんの両親の家へ。
前々から気になっていた割れた土間をセメントで修繕。プロがやるように綺麗にはできなかったけど、二人の喜んでくれる顔が見れた。『材料代』と言って封筒を持って来てくれたが丁寧に断るも、何度か押し問答したがありがたく頂く事に。
この日のミッションを終え、夕暮れの帰宅中、私と良く遊んでくださるおじさんから電話が。
このおじさんは、住職をされてる友人にご縁を頂き知り合えた、父親みたいなお友達。
なんでも東京の娘さん夫婦が来福、家の片付けをしてくれた上、料理人である旦那さんが家のキッチンでご馳走を作ってくれてるそうな。
「それはとってもいいお盆ですね。しっかり楽しまれてくださいね」
と言って電話を切った後、なんだか喜ぶおじさんの顔も見たいし、娘さんご夫婦にもご挨拶をしたかったので、何本かのお酒を手に顔を出した。
突然の訪問にも関わらず、おじさんも娘さんご夫婦も、とても優しい笑顔で迎えてくださり、お互いに感謝を伝え合って固く握手をして帰ってきた。
家に到着したのは午後8時。
汗臭くなった体をシャワーで洗い流し、さて酒でも飲むかと思った瞬間、天井からポタリと雨漏り。やれやれベランダのコンクリートが劣化で割れ、エアコンから出る水が染みて雨漏りをしているのだ。とりあえずその日は2階のエアコンを使わないよう息子に言って就寝。
8月14日は大雨。
バリバリと雷鳴轟く中、朝からグッデイで買った塗料、下地材、パテ、値段を良く見ずに買った5,800円の高級ホースを使って、まるまる一日がかりで無事、雨漏り修理が完了。まるで新築のように美しいベランダに生まれ変わった。
明る15日は、預かってたヨシお父さんの時計の修繕。
出来上がりを持って行くついでに新調した棚に入れるカゴを、もういくつか欲しいというので買って行き、また母の喜ぶ顔を見せてもらえた。
とても体は疲れたが、気持ち良い汗をかいた、いいお盆の三ヶ日だった。
そして8月16日の朝、
死後初めて父方の祖母の夢を見た。
夢の中で家に帰ると祖母が他の何人かのおばさんと一緒に日当たりのいいテーブルに腰掛けてた。
「おばあちゃん!えらい久しぶりやん!」
振り返ったおばあちゃんは最後に会った30年前と変わらない笑顔で微笑んでた。昔からよく着てた毛糸の手編みのベスト。その上から優しく肩をさすった。ベストの色は知ってる花柄ではなく、少し今風の薄い紫。
「おばあちゃん全然変わらんね!俺、何歳になったと思う?」と尋ねると
「そうね~、3じゅう〜、2、ぐらい?」
「違うよ!52よ!俺、もう52歳になったとよ!」
と言うとおばあちゃんは嬉しそうに驚いて周りのおばさんたちに向かって手を小招くような、昔からのクセを見せてくれた。と、…そこですぐに目が覚めた。
起きると既に涙が流れて鼻も詰まっていたが、久しぶりにおばあちゃんと話ができた嬉しさと、死んだという実感が湧いてきて、どんどん、どんどんと泣けてきた。
最後に話したのは30年前で内容は覚えていない。その日は死んだ親父が49日でお墓に入った日。おばあちゃんを乗せた車中の会話の中で、母が俺にポロっと言った、「あなたは母親より先に死んだらいかんよ」が癇に障り、俺がいなくなった時、母がこってり絞られたと、後になって聞いた。
いつも優しいおばあちゃんがお母さんを怒るなんて信じられなかったが、生前はそんな事がよくあったみたい。
それを知って少し嫌いになった。
母の再婚もあって、それまで優しくて大好きだったおばあちゃんに会うことも無くなり、次に顔を見たのはそれから何年か後、おばあちゃんは既に棺の中だった。
いつも一緒にテレビを見て笑い、俺のクオリティの低いギャグにも喘息を出しながら笑ってくれたおばあちゃん。
近所のお兄ちゃんに泣かされて帰った日は、怒鳴り込みに行こうとするおばあちゃんを止めたこともあった。
小さな頃からしょっちゅうおばあちゃんの家に預けられ、毎日一緒に過ごしたおばあちゃん。
30年も経って…やっぱり大好きな存在なんだと思い出した。
おばあちゃん、ごめんね。